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  • Yuko Yoshida &Atsuco iwasa

#5 お出かけおこわ

kitchen story vol.5

山内敬子さん 73歳


駅直結の高層マンションに1人で暮らす敬子さん。

2年半前、住み慣れた一軒家を離れ、この場所に移り住みました。

『便利な駅前だし車なんて必要ないね、って友達にも言われるんだけどね。 私テニスをするかやっぱり必要なのよ』と、嬉しそうに購入したばかりの車の写真を見せてくれました。

それはスポーツモデルで色は黄色。 元気で若々しい敬子さんにピッタリのデザインでした。 綺麗に整えた爪とハンドメイドのマスクチェーン、取材に訪れた私達に対し、家中オープンにして寝室までも案内してくださる人懐っこい笑顔。 いつも好奇心を持って溌剌と歩んで来られた方なんだと、敬子さんが纏う陽の空気に包まれた出会いの瞬間でした。


へっついさんと電子レンジ

敬子さんが幼少期を過ごした家には『へっついさん(関西弁でかまどの事)』があって、お母様はそこで火を起こし、家族の年齢や好みによって何種類ものおかずを調理されたそうです。

現代では想像もつかないけれど、家長達は御座敷で、お母様と敬子さんを含む子供達は土間で、 と別れて食事を取っていたのだとか。

幼い頃の敬子さんには、『ねえや』と呼ばれる家政婦さんがいて髪の毛を結ってくれた事。

カトリックの私立小学校に通い、小学4年生で洗礼を受けた事。 休日にはおばあさまが、文楽劇場に舞台を観に連れて行ってくれた事。 高校時代から『花嫁修行』として中華料理や日本料理を習っていた事。 懐かしいお話を伺いながら、敬子さんが纏う少女のような可愛らしさのルーツが見えたような気がしました。

敬子さんは高校を卒業すると、反対する両親を説得し、修道院のボランティアエイドとしてイギリスへ渡りました。それは高校1年生の時から憧れていた事でした。修道院では家政科で仕事の手伝いをして、夜にはロンドンの料理教室に通いました。 1年半を過ごした寄宿舎での食事は質素そのもの。大鍋で煮込んだ豆ばかりが出されました。 美味しい外食を夢に見ながら、渋々食べていたあの味も、今となっては時々ふと思い出し無性に食べたくなるそうです。

イギリスから帰国してすぐに、中学生の頃からの友人だった2つ年上のご主人と結婚し、義理のご両親との同居生活が始まりました。台所は別でしたが時々は一緒に食事を取る機会があり、京都出身のお義母様が作る食事、その食文化の違いに驚きながらも教わる事が多かったと言います。

息子さんが小学生になる頃に、敬子さんの実家の横に家を建て移り住みました。 その頃から後輩達に頼まれた事をきっかけに自宅で英語教室を始めます。 教室が忙しくなると、子供が学校に通っている昼間に食事の下準備をあらかた済ませ、18時にはカウンターで子供に食事を出す。そして19時には次のレッスンが始まるというような日々。 焼き魚やお刺身が好きなご主人と、子供の食事は別メニューで用意することが多く、多忙を極める中で敬子さんの食事作りを助けてくれたのは電子レンジでした。

伺うと、温め直しのみならず、下ごしらえや最終調理まで『電子レンジ』の役割は、私達の想像を 優に超えていて、その頃の敬子さんは突然の故障に備えて電子レンジの予備をストックしていた 程、無くてはならない存在だったそうです。

昨今、家庭でお米を炊くのに土鍋が見直されていたり、 手をかける事の良さが見直され、注目を浴びていて、 電子レンジはとても便利で働き者なのに、どこかそれに見合った評価を受けていないのかもしれない、へっついさんも電子レンジも、どちらも目的は同じ『大切な人に美味しい食事を届ける事』なんだな、と改めて電子レンジを讃えたい気持ちになりました。


『楽しい』を枯らさない

敬子さんのお母様は、声が大きくて社交的、とにかくパワフルな方だったそうです。 そして外で美味しい物と出会うと、家に帰って直ぐに味を再現してしまう程料理上手でした。

敬子さんも同じように社交的で、友人家族で持ち寄りのパーティーをしては、情報交換をして料理の幅を広げたり、友人を家でもてなしたりと、食と言うツールで多くの方と楽しみを共有して来られました。

現在、息子さんは東京あるカトリック修道院で司祭をされています。 6年前にご主人を亡くされてから、敬子さんは一人暮らし。 『もう主人が亡くなってからは、食事も一人分だから常備菜を少しづつだけね』と話しながらも、神戸の街を一望するベランダには、きちんと干し柿が吊るしてあり、食を疎かにしない暮らしが透けて見えました。

友人とテニスをしたり、それぞれに作ったものやお勧めの物を交換しあったり、その『楽しい』 を枯らさない生き方は、きっと自分を、そして周りで見ている人を幸せにするんだと感じます。

人生最後の15年間を車椅子で過ごされたお母様が、変わらず明るく前向きでおられた事、それをそばで支えながら一緒にその人生を楽しまれた敬子さん。それは、お二人のたおやかな強さ故なのでしょう。


電子レンジで豆おこわ

今回ご紹介下さったのは、電子レンジで作る豆おこわ。 大阪の某老舗和菓子店の看板商品を模したメニューです。 竹皮で三角に包装されていて、塩昆布とカリカリ小梅が添えられているのが特徴。 それは幼少期の敬子さんがお婆さまと文楽劇場に行くと、必ずおやつ代わりに食べさせて貰っていた物でした。

口にする機会もすっかり無くなっていた頃に、友人からのお土産で味と共に、その頃の思い出が蘇ったそうです。

電子レンジでもちもちの豆おこわを炊き上げ、同じように塩昆布とカリカリ小梅を添えています。



お出かけおこわ


餅米2cup

昆布かつおだし2cup 塩 少々 酒 少々 昆布茶 少々 醤油 少々

水煮大豆真空パック 1パック

塩昆布 カリカリ小梅


1 前日(朝でも)から水に昆布で出汁をとる 2 火にかけて沸いたらカツオを入れ、少し煮出して味をしっかり出す。 3 カツオと昆布をザルで漉し、塩小さじ1程度、酒、昆布茶、醤油各少々で味を整える。 4 洗ってしっかり水切りした餅米2cupを耐熱皿に入れ、3のお出汁を同量(2cup)を熱々のう

ちに入れて15分置く。 5 蓋をして600wで10分レンジにかける。 (蓋が無い場合はしっかりラップで代用)

6 一度取り出して全体を混ぜる。 7 再び600wで10分レンジにかける。


塩昆布とカリカリ小梅を添えて頂く。


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