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  • Yuko Yoshida &Atsuco iwasa

#1 経過点の料理

更新日:2021年1月4日

Kitchen story 『検索しても出て来ないレシピ』

亜子さん 53歳 主婦

子ども5人

現在、旦那様、結婚を控えたご長男、高校生、小学生の娘さんと5人暮らし。


穏やかな空気の漂う閑静な住宅街に建つアコさんのお宅。

この家に辿り着くまでに、実に10回の引越しを経験して来たと言う。

5人の子供を育てながら、10回住まいを変える。

それを想像しただけでも目眩がしそうだけれど、

流れに抗う事なく、柔軟に変化しながら対応して来られたのだろうと言う事が

少し話すとすぐに理解できた。


*お茶作りは主婦修行?


日当たりの良い窓際に置かれたソファー。

壁一面、天井までの本棚に並んだ本や参考書からは、家族の好みや歴史を読み取る事が出来る。

リビングの真ん中にぶら下がる布製のブランコ。

部屋全体を見渡せるアイランドキッチン。

無駄がなく、すっきりと片付いているのに、程よい生活感があり、

初めましての私達を緊張させない空気が流れている。

“住まいには住人が表れる”と納得。

『どんな企画なの?』

取材に来たのは私達なのに、引き出し上手で褒め上手なアコさんの手に掛かると、

うっかりこちらの方が良い気分になってあれこれ話している。

私達の話に耳を傾けながら取り出したタッパー。

中にはジャスミンティーの大きな茶葉が水出しされて柔らかく開いていた。

『主婦にとってお茶作りって修行みたいじゃない?

夏なんて特に、切らしたらダメだし腐らしてもダメやん?

物凄いプレッシャーよ』と、笑いながら、カップに茶越しを乗せ、

タッパーから直接コップにお茶を注ぐ。

『お急須って、洗うの大変だから、もうタッパーで水出しが一番楽よ。

香りの強いお茶ならタッパーにビニールをセットして水出しにするわよ』

固定概念や常識に囚われず、自由な発想で生活に工夫を。

その軽やかで飾らない姿に拍手が出そうになる。


*タンパク質とサラダストックの常備


『料理は得意じゃ無かったし好きでも無かった、出来れば作らずに済む人生を目指したかったけど。でも、ある時、子供達が巣立って夫婦2人になったとしても、死ぬまでずっと料理をしなきゃいけないんだって気が付いて、もうそれなら攻めに転じた方が得だな!って』

今は家族が食事をとる時間もバラバラなので、冷蔵庫には何かしらの調理したタンパク質を常備しているのだそう。

ローストビーフや豚の冷しゃぶ、鶏ハム、蒸し鶏など。

それを子供達がそれぞれのタイミングで、ご飯に乗せたり、スープに入れたり、炒め物や素麺の具にしたり、一手間加えて食べて行くのだとか。

週末にはご主人が、キャベツ、レタス、パプリカ、キュウリなど、その時々のお野菜を洗ったりカットしたりしてサラダストックを用意してくれるのだそう。

『これの1番の目的はね、仕込んだサラダを、チーズやお肉と一緒にあてにして、休日の明るい内から長ーい時間ワインを飲むのが主人の幸せなのよ』と笑う。

家で長い時間まったりとお酒を飲む事が幸せ。

それはアコさんの作る家庭が、いかに心地良い物かが伝わるエピソードだった。


*朝昼兼用のクロワッサンサンド


主婦の日常に家事の合間で食べる自分一人の食事は、お料理番組で紹介する様な物では決して無い。

『お料理って一回で完結しないでしょ?何かを作ったら絶対食材余るし、それを使ってまた何か作って、買い足して、また作ってって。そんなもんよ。』

そう話しながらアルミホイルの上に冷凍庫にストックされたコストコのクロワッサンを取り出し、切り目を入れたら、チーズを一枚乗せグリルで温めた。そこに、ご主人のサラダストックを少しと、仕込んであったタンパク質ストックのローストビーフを数枚、塩胡椒を振ったら、あっと言う間にボリュームのあるクロワッサンサンドが出来上がった。

『お皿も使わないのよ、洗うのが勿体無いからね。

昨日は子供のテスト用紙の裏で食べたわ』と笑いながら、新聞紙の上に出来上がったサンドイッチをアルミホイルごと置き、くるっと包むと、豪快にキッチンバサミで半分に切った。

『平日の朝は忙しいから、朝昼兼用で殆ど毎日同じ物を食べてるわ、”映え”も何も無いよね』と笑い、誰かに見せる為では無い、今のアコさんのありのままの食事を振る舞ってくれた。


*伝えたい事


子育てで一番大切にして来た事はどんな事ですか?

の問いに、アコさんは迷う事なく『食事』と答えた。

『朝ごはんを子どもが残したら、お母さんが食べちゃったりするでしょ?

それは絶対しなかった。朝は子どもも寝起きで食べられるタイミングじゃ無かったのかもしれないし、そのままラップして学校から帰ったらまずそれ食べなさいって。

そしたら食べるのよ、ちゃんと。

残したものを破棄して次は新しいオヤツなんて無いわー。

だって出されたものを残さず食べるって事は、子どもが最初に出来る社会貢献よ』

子供がお弁当を残して帰って来た時も、すぐに捨てるのでは無く(季節や状況によって違いますが)家に帰ってから完食する事も珍しく無いのだとか。

とにかく捨てない。

食べ物に限った事では無く、物を捨てない。

その為に過剰包装だと感じる商品は買わないなど消費者としての選択をしている。

『買って帰って、要らない所を捨てたら、ゴミを買ってるような物だなって思うような商品もあるのよ。お金出してゴミを買うなんてバカバカしいでしょ?』と。

子供がオムツ期だった頃でさえ、ゴミ袋を1つしか出さず、ご近所で驚かれた事もあったのだとか。

『子供に、家って貧乏なの?と聞かれた事もあるくらい、必要かそうでないか

どうして買うの?どうして捨てるの?って事を考えて選んでいる』と。

幾つかの拘りだけをしっかりと貫き、後の事は柔軟に対応する。

結婚、ご主人の転勤、出産、仕事、子育てのステージとアコさんの女性としての人生はいつも激動だった。それを受動的に待つのではなく、能動的に取り組んで楽しみに変えて来た。

思い出せ無い位、子育てに奮闘した日々はあっという間に過ぎ、

今では家族揃って食卓を囲む機会は一年に数える程しかない。

『家族には、それはそれは色んな事がある、良い時も悪い時も。

でも失敗しても這い上がって来られるのは食べる物があるからよ。

食べる事は生きる事、死ぬまで続くから。

だからこれからの若い世代には、食べる事、作る事を手放さ無いで欲しい。』


最後に、お子さんが5人いらっしゃって、今までで一番楽しかったなと思う時期は何時でしたか?と聞いてみた。

すると輝く笑顔で『今!今が一番楽しいよ!楽しみにしといて!』と希望の言葉を残してくれた。


 何でもない日のサンドイッチ


クロワッサン(コストコ冷凍)

チーズ

サラダストック(キャベツ、パプリカ、人参、玉ねぎ)

ローストビーフ


①クロワッサンに切り込みを入れ、アルミホイルに乗せ、開いてチーズを乗せる。

②魚焼きグリルでチーズがとろけるまで温める。

③チーズが溶けたらホイルごと取り出し、サラダストック、ローストビーフを乗せ、塩胡椒を振る。






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